おそらく人を死に追いやる毒が。
始末が悪いことに私の毒は揮発性、私の周囲に拡散させている。
そして、私のからだの中で次々に生み出されている。
私に近寄るものは、漂う淡い毒を受け、興奮、高揚感、悲しみ、さらに幻覚すら見るだろう。
たいていはその妖しさに気づき後退する。
何事もなかったように日常生活に戻っていくことだろう。
しかし、なかには引き込まれてしまうものがいる。
私に対する幻覚から、手を伸ばし、触れ、食べてみようとするものもいるだろう。
彼らの多くは手痛い思いをして飛び退り、毒のエリアから抜ける。
それでよいのだ。
そうでなければ私は彼を死にさえ追いやるかもしれない。
さいわいにも未だ私の毒で死の淵に立ったものはいない。
私にそこまで騙されるものはいない。
毒を持つ私、私は嫌いではない。
が、人には向けたくないというわずかな想いがある。
私の毒、持てる良い作用を人に向け、少しでも役立てればなどと慢心していた。
私の毒、毒は毒である。
私は毒を持つ。
その事実をはっきりさせよう。
近づくな。
私は誰も近寄らないような暗い森深く、一つ生えている暗いきのこ。
近寄るな。
毒は毒として揮発拡散させる。
誰も近寄らせない。
私は一人でよい。
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