私は峠の草に坐りこんで、前途の選擇よりも、無益に失った一時間半よりも、自分自身の性格をうらぶれた心で考えた。美しい計畫を立てながら忽ちそれが厭になり、爲す事に持續が無く、肝腎な事柄を遷延し、カントの意味の「義務」を怠り、「イミタシオ」が戒める瑣事に心を動かし、しかも其等に理窟をつけ、旨く口實が成立てば其事のために又却って自分を不快に思い、今度こそ正しく遣ると己に誓い、少しばかり實行し、そして又ずるずると元へ戻るという此の情ない性格の弱點……
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