ただ女性になりたくて、
でももちろんどうしてよいかわからず過ごしていました。
というか当時の日本社会ではそんなことは誰も思いもよらず、
本当にごく一部の方が遠い国まで行き、
大きなリスクを覚悟で
やり遂げていたことに過ぎないのです。

子どもにとって、それはただ夢想することだけが可能な、
事実上不可能に思えることでした。

そう、何か超絶的な力により、
使命を与えられ変身させられるみたいなことを、
毎晩、想像していたものです。

長じてもその状況はあまり変わらず、
ただただ悶々と、日々、
自分の思いを覆い隠し過ごしていました。

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そのまま社会も動かず、知識も広まず、
ＳＲＳなんて知らなければ、
いまだに悶々と、ただ女性のものを身につけたり、
とても隠れて女装したりで、
危うい心のバランスを取っていたことでしょう。

いいえ、もしかしたら迫り来る年齢とどうにもならない思いに
私は破綻を来していたかも知れません。

不可能なことは諦める！

と言いつつも、女性へのこの思いは諦めることができなかったでしょう。
だからこそ、世の動き、情報の入手により、
女性ホルモンのフライングをし、
また、ジェンダークリニックにも通い始めたのです。

しかし、この先どうなるのでしょうか。

明確な目標、誰もが思い描く目標のようなものならば提示できます。

ＳＲＳをするとか、名の変更をするとか、戸籍の性別を変えるとか、
でも、それらは本当は手段であり、目的ではないはずです。

本当は、どんな人生を歩むかが問われているように感じます。
それらは充実した人生を送るための手段に過ぎないのです。
本当にその手段をすべて揃えなければ充実したとは言えないのでしょうか。
そういったことがすべてできなくとも、
充実させることは可能なように感じます。

手段を目的と誤認し、その間違った目的のためにいろいろなことを、
充実した人生を送るために必要なことを捨ててはいないでしょうか。

そこらをよく考えてみなければなりません。

私は欲張りです。
そういったことも、人生の最後に向かい、
思いを残さないためには得たいと思いますが、
だからといって、普通に生きる幸せも放棄したくはないのです。

だから、手段を目的とはき違え、壁をハンマーで叩き壊し、
性急に強行突破することはしないでしょう。
今までもしてこなかったつもりですし、
おそらくこれからもしないでしょう。

そぅっと壁に沿って歩き、小さな穴をみつけ、もぐり込みます。

それが私のトランスのやり方、いいえ、人生の過ごし方なのかも知れません。

あれもこれも、普通の人生もトランスも私は欲しいのです。


　　　

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